2025.3.18

グランフロント大阪に笹岡由梨子らの作品が新たに展示。「ART SCRAMBLE」の第9弾をチェック

多くの人が行き交うグランフロント大阪で展開されてきたアートプロジェクト「ART SCRAMBLE」(アートスクランブル)。その第9弾として、笹岡由梨子らの新たな作品が3月18日より展示される。

展示風景より、笹岡由梨子《MUSE》
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 大阪・梅田の中心地であるグランフロント大阪から、世界へ羽ばたくアーティストをサポートするアートプロジェクト「ART SCRAMBLE」(アートスクランブル)。その第9弾がスタートする。

 同プロジェクトは、2021年3月にプロジェクト・ディレクターに椿昇を迎えてスタートし、グランフロント大阪を拠点に全国、世界へ羽ばたくアーティストをサポートしてきた。これまでに計27点(全8回)の作品が展示されており、大阪の名物と言える存在感を示している。

 その第9弾を飾るのは、オブジェ1点、うめきた広場ベンチアート1点、うめきた広場大階段アート1点、メディア・アート1点、アートピアノ1点の合計5作品だ。

 オブジェを制作したのは笹岡由梨子。笹岡は大阪府出身で、映像の中にある絵画との接点を探るべく、絵画における手の痕跡や筆致と近似した、高性能な CG映像にはない異物感や違和感を引き出し、独自のストーリーを紡ぐ作家だ。笹岡は南館せせらぎテラスに大型パブリック・アート《MUSE》を年間通して展示し、グランフロントをアートで彩る。

展示風景より、笹岡由梨子《MUSE》

 同作は、笹岡自身が時計の針となり、文字通り時間のメカニズムに組み込まれ、大阪の脈動する空間の中に自らの身体を刻み込むというもの。時間だけでなく、都市空間と個人の記憶がどのように絡み合い、私たちのアイデンティティを形成するのかを探る試みでもあるこの作品。笹岡自身の身体を時計のリズムに重ね、モザイクで表現された母の顔を配置し、数十年前の大阪のノスタルジーと現在の都市のアイデンティティを交錯させることで、過去と未来をつなぐ架け橋をつくりだす。

 この作品をディレクション・キュレーションしたアーティスト・ヤノベケンジは、以下のようなコメントを寄せている。

「どこから見ても笹岡由梨子。」
こんなキャッチコピーが頭に浮かぶ程、彼女は唯一無二の個性を放つアーティストである。
クセの強い彫刻造形、視覚と聴覚に焼きつく映像と音響。その圧倒的な存在感は、大阪の喧騒すら凌駕し、観る者に「アートとは何か」という問いすら忘れさせる。
異様なまでのエネルギーに満ちたその表現は、作家としての長いキャリアを持つ私のプライドさえ揺るがすほど強靭だ。大阪・関西万博のスケールを遥かに超える熱量をもって、観る者を魅了し、圧倒するだろう。
その才能の爆発を、ぜひ目撃してほしい。
笹岡由梨子《MUSE》の制作風景

 また、うめきた広場ではベンチの天板にペイントし、実際に座ったり、触れたりできるアート《のほほん》を展示。手がけるのは、1994年兵庫県出身のストリート・アーティストTim Kojimaだ。一部のベンチは一般来街者もペイントで参加し、来街者と”共創”する作品となる。

展示風景より、Tim Kojima《のほほん》
展示風景より、Tim Kojima《のほほん》
展示風景より、Tim Kojima《のほほん》

 うめきた広場大階段は、「ストリートアート×和」をテーマにした表現に取り組んでいるMOYAによる作品《OSAKA》で彩られる。ストリートの文脈を踏襲しつつ、文字の中には日本らしさと華やかさを感じさせる伝統的な日本画の花が描きこまれている。

展示風景より、MOYA《OSAKA》

 「ART SCRAMBLE」で新たな試みとなるのが、メディア・アートの展示だ。NONOTAKはNoemi SchipferとTakami Nakamotoのパリ在住のアートユニット。うめきた広場南側会議室に設置される《LIGHT EXCURSION》は、36個の鏡がゆっくり回転しながら上下に動き、光が反射することで幾重にも重なる煌めきをつくり出すというもの。鏡にはフラグメントされた周りの環境が写し出され、穏やかな動きで優しくゆらめき、NONOTAKがつくるアンビエントな世界に誘われる。

展示風景より、NONOTAK《LIGHT EXCURSION》
展示風景より、NONOTAK《LIGHT EXCURSION》

 このほか、うめきた広場では3月23日〜29日の予定で、パラアーティスト・武蔵がペイントを施したストリートアートピアノが登場。来街者が自由に演奏することができる「触れられるアート」をぜひ楽しんでほしい。

 ディレクターの椿昇は、「ART SCRAMBLE」が桜の開花に先駆けてグランフロント大阪エリアを中心に開催されることについて、「このプロジェクトは実験的なパブリックアートやミューラルアートというジャンルからスタートし、都市に実験的に介入する若いアーティストたちの発表を支援する取り組みとして今回で9回目を迎えます。世界的に名高いカッセルのドクメンタやリンツのアルスエレクトロニカも、スタート当初は情熱を持った人々のささやかな取り組みから始まりました。誕生したグラングリーン大阪とともに、グランフロント大阪がアジアや世界への豊かな文化の窓口として、人々に愛される場となると確信しています」とコメントしている。