篠山紀信の新作を安藤忠雄建築で目撃せよ。「光の情事」展が光の美術館で開幕
写真家・篠山紀信が、山梨の清春芸術村にある安藤忠雄建築「光の美術館」で新作を撮り下ろし、個展「光の情事」をスタートさせた。自然光のみで撮影された作品が並ぶ本展の見どころを篠山の言葉とともにレポートでお届けする。
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小林秀雄や白洲正子と親交のあった画商・吉井長三(1930〜2016)が創設した山梨・北杜の清春芸術村。ここにある安藤忠雄建築「光の美術館」で、写真家・篠山紀信の個展「光の情事」が開幕した。
「光の美術館」は、安藤建築に特有のコンクリート打ちっ放しの美術館で、展示室に人工照明がないのが特徴。自然光のもとで作品を鑑賞するために建てられており、天井の一角や数カ所のスリットから入る太陽光が館内を照らし出している。
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篠山は今回、個展のためにこの美術館内で撮影を敢行。会場には、一切の人工照明を使用せず撮影されたヌード作品が並ぶ。その場所で撮影された作品をその場所で見るという手法は、2016年に原美術館で行われた個展「快楽の館」でも採られたが、作品の傾向はまったく異なるものだ。
7月の夏の光のもとで撮影された作品はいずれもモノクロで、強い緊張感をたたえている。篠山は今回、カラーではなくモノクロを選んだ理由を「モノクロのほうが光のコントラストがはっきり出る。光のコントラストの面白さを狙いました」と話す。
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「光の美術館は撮影場所として魅力的。密度のある空間で、写真家としては撮りやすいですよ。小さい空間の中にこれだけ緊張感あって、光がダイナミックに入ってくるのはエロティック。無駄な場所やダレている場所がないよね」。
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この光の美術館が持つ、独特の場所性は本展のタイトルにも反映されている。「光の美術館は、空間と光だけでも怪しい関係(情事)ができている。それに加えてモデルや光、空間、そういった様々な対象同士の情事、ということでこのタイトルを付けました」。
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刻一刻と光が移動する空間内では、作品の表情も変化し続ける。通常の美術館ではありえないこの鑑賞体験を、ぜひ光の美術館で堪能してほしい。
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