「MEET YOUR ART FESTIVAL 2024」開幕レポート。次世代につなぐアートのおもしろさ
東京・天王洲を舞台に開催されるアートとカルチャーの祭典「MEET YOUR ART FESTIVAL」が、東京・天王洲運河一帯の寺田倉庫を中心とした7会場で開幕した。会期は10月14日まで。会場の様子をレポートする。
文・撮影=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)
2022年に初開催され、昨年は4万人以上を動員したアートとカルチャーの祭典「MEET YOUR ART FESTIVAL」が、東京・天王洲運河一帯の寺田倉庫を中心とした7会場にて開幕した。会期は10月14日まで。
今年のテーマは「NEW ERA」として、アートエキシビションやふたつのアートフェア、マーケット、ライブパフォーマンス、トークセッションなど様々なコンテンツを開催。フェスティバル全体で100名以上のアーティストが参加している。そのハイライトを紹介する。
「SSS: Super Spectrum Specification」
寺田倉庫G1ビルでは、山峰潤也による監修のもと、吉田山、呉宮百合香、堤拓也の3名のキュレーターがコラボレーションした展覧会「SSS: Super Spectrum Specification」が開催されている。
山峰は「次の世代にバトンを渡していくという意識で3名のキュレーターに仕事を依頼した」と語る。また、吉田山は「都市における、何かがつねに起きて連鎖していくという連続性を表現できる作家を選んだ」とコメントした。
テクノロジーと身体表現とを融合させたインスタレーションやパフォーマンスで知られるアーティストデュオ・MESは、新作《ダイ/DA-l》 (2024)を発表した。MESのメンバーが床に寝転がっており、その背中を上からのレーザーがなぞっていく。身体への抑圧を眼の前で感じさせるというインパクトあるパフォーマンスが、本展の目指すところを強烈に印象づけるだろう。
「EXPO70 OSAKA みどり館アーカイヴ」は、1970年の大阪万博のブース「みどり館」のアーカイヴ展示だ。「アストロラマ」世界初の全天全周映画を上映したこのブースのプログラムのひとつには、脚本を谷川俊太郎が手がけ、舞踏家・土方巽が出演するものもあった。加えて、具体美術協会の展覧会も開催されるなど、この先鋭的だったブースの様子を振り返る。
雪山で時速100キロメートルで果物をぶつけ合うパフォーマンスを記録したcontact Gonzoの《Physicatopia》(2017)は、ときに笑いをともないながらも、身体に生じる痛みが映像として立ち上がってくる。見るものに「自分がその場にいたらどのような知覚が生まれるか」という想像力も喚起するといえよう。
このように本展の冒頭では、明確に「身体」のあり方を問う展示が行われている。ほかにもアグネス吉井、トモトシ、中間アヤカ、森下真樹がパフォーマンスを行うなども、身体への問いの現れだ。
09年に結成されたアーティスト・コレクティブ「オル太」は、20年に初演された作品《超衆芸術 スタンドプレー》を、モニターやインスタレーションを組み合わせて展開。東京オリンピック開催前夜の東京で見つけた興味深いものを組みあわせ、新国立競技場を模したインスタレーションの中で映像を上映。都市での共存というテーマを掘り下げた。
いま、世界で起きている国際情勢に様々な方法でアプローチする作品も見受けられた。07年結成の演劇カンパニー、かもめマシーンは電話回線を用いて一対一で上演する「電話演劇」に取り組んできた。本展ではイスラエルによるガザの大規模侵攻を経験した人々が書いたモノローグ集『ガザ・モノローグ』を扱う、災害用伝言ダイアルをつかった作品を展示。受話器をとおして観客一人ひとりが声をきき、そして自ら話すことで、ニュースでは見えてこない個人の物語に向き合う。
台湾生まれのシュウ・ジャウェイは、2018年に初演された映像インスタレーション《黒と白ージャイアントパンダ》を展示。日本のお笑い芸人と協働した本作は、コミカルに構成された作品だが、中国と台湾のあいだにある政治的な駆け引きを表象している。
ほかにも、アントニス・ピッタス、ゴッドスコーピオン、風間サチコ、suzuko yamada architects、ボマ・パク、松田将英、下道基行が参加。様々なかたちで都市における身体とその拡張性を問いかけている。
「MEET YOUR ARTISTS」
国内外の気鋭アーティスト40名による200点以上の作品が展示・販売されるアートフェアが、B&C HALLを舞台とした「MEET YOUR ARTISTS」 だ。
紙を支持体にミシン刺繍を施し、貨幣の価値を問う青山悟、アニメやゲーム、インターネット上の記号を集積して絵画を制作する梅沢和木、VR空間で複製技術について思考しながら平面作品を制作する松田ハルなど、約40名の作家が参加している。
「CROSSOVER」
18組のギャラリー、アーティスト・ランスペース、キュレーター、企業が展示・販売を行うアートフェアが、E HALLを会場とする「CROSSOVER」だ。若手を中心とした気鋭の出品者がそろっている。
中目黒のBARからスタートした学芸大学のアートスペース「月極」、大阪の「Marco Gallery」「Pulp」「VOYAGE KIDS」の3ギャラリーによるプロジェクト「KIOSKKIOSK」、25年のギャラリーオープンを目指すNANZUKA出身のギャラリストによる「AKIINOUE」、茨城・取手を拠点とするアーティスト・ラン・スペース「スタジオ航大」など、個性豊かな出店者があらたなアーティストとの出会いを創出している。
ほかにも、初開催となる「TOKYO ART MARKET」(会場:WHAT CAFE)では、アートグッズやZINEを取り扱うショップを中心に40店舗以上が集結。「OUTSIDE MARKET」(会場:ボードウォーク、ボンドストリート)では、ファッション、ライフスタイル、フードなど全国から40以上のショップが出店している。
また、ライブパフォーマンス(会場:T-LOTUS M)では、アートとカルチャーシーンに親和性の高い国内外のミュージシャンとDJによるパフォーマンスを4日間にわたり開催。トークセッション(会場:WHAT CAFE)では、森山未來と出展アーティストによるトークセッションに加え、「アート×経済」をテーマにした多様なトークも予定されている。