原田 郁・衣 真一郎　リポジトリ：内と外で出合う

　太田市美術館・図書館で「原田 郁・衣 真一郎　リポジトリ：内と外で出合う」が開催されている。

　本展は、内と外の風景を、原田郁（1982〜）と衣真一郎（1987〜）の絵画によって提示する。原田は、彼女だけの3DCGによる仮想世界「inner space」を拡張させ続けながら、自在にその中を歩き回り、その一角を絵画として描き起こす。衣は、自身の故郷を中心に、古墳や山、田畑などを目印に歩き続け、その周囲にも目を向けながら風景を取り込み、絵をつくっている。

　季節や時間の流れの移り変わりにより、その場限りの風景を見せてくれる屋外はもちろん、室内、あるいはデジタル空間であっても、その人の置かれた境遇、体調、気分によって、その場限りの風景が記憶に刻まれることは、多くの人が体験していることかもしれない。こうした内外の風景の蓄積が、私たちの「世界」を豊かにひろげている。

「リポジトリ（repository）」とは、貯蔵庫、収納場所あるいは墳墓などを意味する単語であり、デジタルデータを格納する構造のことも指す。美術館・図書館という同館の性質を言い表すのと同時に、ふたりの作家がフィールドとする、広がり続ける仮想世界や、植物にまぎれながらあり続ける古墳をも想起させる単語だ。

　作家は、それぞれのリポジトリで風景に出合い、"内＝自身の心象を反映させた仮想世界"と、"外＝刻一刻と変化する土地"を画面にあらわす。本展では、ふたりが各自の方法でつくりあげた内と外の風景を見ることで、それが私たちの「世界」をひろげるきっかけになることを目指す。