松山智一の美術館初個展から、ACK、落合陽一の個展まで。今週末に見たい展覧会ベスト9
今週開幕・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。
ピカソのセラミック作品にあふれる様々な「生命」と出会う。「ピカソ いのちの讃歌」(ヨックモックミュージアム)
洋菓子「シガール」で知られるヨックモックの会長・藤縄利康のプライベート美術館で、今年3周年を迎えた東京・南青山の「ヨックモックミュージアム」。その第4弾となるコレクション展「ピカソ いのちの讃歌」が開幕した。会期は2024年9月23日まで。
会場は、ピカソが幼い頃に触れた「闘牛」からインスピレーションを得た作品を紹介する1章に始まり、ピカソに縁の深い「鳩」が登場する2章、その眼光の鋭さから、自身と存在を重ねたであろう「フクロウ」を取り上げる3章、魚やウニをはじめとする海の生き物や鳥、虫など、手のひらに収まる小さな命を主題とする4章。そして最終章では、ピカソの晩年に寄り添った妻「ジャクリーヌ」をモチーフとした作品の数々を紹介するといった、全5章で構成されている。
会期:2023年10月24日〜2024年9月23日
会場:ヨックモックミュージアム
住所:東京都港区南青山6-15-1
電話番号:03-3486-8000
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし祝日の場合は開館、翌平日休館)、年末年始(12月25日〜24年1月5日)
料金:一般 1200円 / 学生 800円 / 小学生以下無料
松山智一の日本初となる美術館個展。「松山智一展:雪月花のとき」(弘前れんが倉庫美術館)
ニューヨークを拠点に活動している現代美術家・松山智一の日本初となる大規模な美術館個展「雪月花のとき」が弘前れんが倉庫美術館で開幕した。会期は2024年3月17日まで。
本展は、2009年にニューヨークのギャラリーで初個展を開催した松山の、日本の美術館における初めての個展。総展示面積1200平米を超える弘前れんが倉庫美術館では、松山がコロナ禍を前後する時期に制作した近作と本展で初めて発表される新作を中心に、アーティストとしての進化と深化の過程が紹介されている。
会期:2023年10月27日〜2024年3月17日
会場:弘前れんが倉庫美術館
住所:青森県弘前市吉野町2-1
電話番号:0172-32-8950
開館時間:9:00〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:火、年末年始(2023年12月25日〜2024年1月1日)
料金:一般 1300円(1200円) / 大学生・専門学校生 1000円(900円)
※()内は20名様以上の団体料金
京都各所で多彩な企画を開催。「Art Collaboration Kyoto」(国立京都国際会館)
国立京都国際会館で、第3回目のアートフェア「Art Collaboration Kyoto(ACK)」が10月28日〜30日の会期で開催される。
今年は、国内のギャラリーが海外のギャラリーと共同出展する「ギャラリーコラボレーション」と、京都にゆかりのあるアーティストを紹介する「キョウトミーティング」の2つのセクションに加え、「パブリックプログラム」「ACK Talks」「ACK Kids’ Programs」などのプログラムも引き続き開催される。
会期:2023年10月27日〜10月30日 ※27日は関係者・招待のみ
会場:国立京都国際会館(京都市左京区宝ヶ池)ほか
主催は前澤友作が代表を務める現代芸術振興財団。ハロルド・アンカート個展「Bird Time」(両足院)
ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、ハロルド・アンカートの個展「Bird Time」が京都にある両足院で開催される。会期は10月29日~11月11日。主催は前澤友作が会長を務める公益財団法人現代芸術振興財団。
作家による日本での初個展となる本展。この寺院建築にあわせて展示される絵画シリーズには、架空の世界へと続く円窓がモチーフとして描かれるのもポイントだ。また、展覧会タイトルである「Bird Time」は、朝陽が昇り、鳥たちがさえずり始める時間のことを指すとともに、人々が寝醒め、1日の最初に目を開く時間をも表している。
会期:2023年10月29日~11月11日
会場:両足院
住所:京都府京都市東山区大和大路通四条下る4丁目小松町591
開館時間:13:00〜17:00 ※最終入場は16:30まで
休館日:無休
料金:無料 ※拝観料別途、要オンライン予約
最新シリーズ「Brush Impression」から《火》を中心とした新作を公開。「杉本博司 火遊び Playing with Fire」(ギャラリー小柳)
ギャラリー小柳で開催中の杉本博司個展「杉本博司 火遊び Playing with Fire」が10月27日で閉幕する。
本展は、杉本が暗室のなかで定着液に浸した筆を駆使して印画紙に書を揮った最新シリーズ「Brush Impression」から《火》を中心とした新作を初公開するもの。杉本は火について「誕生の秘蹟でもあり、燃え尽くす終焉の響きでもある」として幼少期から様々な関わりを持っていた。「In Praise of Shadows 陰翳礼賛」シリーズでは、蝋燭に灯した火がたどった時間の軌跡を1枚の写真に収めた。
杉本はこれまで、すでに「ある」ものに自身の解釈を加えて新しい表現へと発展させる試みを続けてきた。これを伝統的な和歌の手法になぞらえ、「本歌取り」と表現している。今回の作品は、臨書を始ま りとして「本歌取り」の解釈をさらに広げ、文字の起源について考察し、自然の形象である「炎」そのものを転写している。杉本は試行錯誤の過程で、人類最古の文字のひとつとされる「楔形文字」、古代エジプト で使用された象形文字が記された「死者の書」、大本教祖出口なおが神の言葉を書きつけた「お筆先」を参照しながら、表音文字の「あいうえお」に表意文字の漢字を当てはめて歌にした一連の作品を制作している。
会期:2023年9月5日〜10月27日
会場:ギャラリー小柳
住所:東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル9F
電話番号:03-3561-1896
開館時間:12:00〜19:00
休館日:日月祝
料金:無料
グラフィックデザイナー・粟津潔の邸宅で見る吉國元作品。「吉國元 根拠地 粟津邸ではじまる」(粟津邸)
戦後日本のグラフィック・デザインを牽引した粟津潔(1929〜2009)。川崎市にあるその自邸兼アトリエが、アートスペースとして生まれ変わった。
粟津は独学で絵とデザインを学んだグラフィックデザイナー。1955年のポスター作品《海を返せ》が日本宣伝美術会賞を受賞し、書籍の装丁や劇場のポスターを数多く手がけた。また60年には黒川紀章、菊竹清訓らとともに建築運動「メタボリズム」を結成するなど、グラフィックデザインにとどまらない活動を見せたことでも知られている。
スペースのこけら落としとして、アフリカのジンバブエにルーツを持つアーティスト・吉國元の個展「吉國元 根拠地 粟津邸ではじまる」が10月29日まで開催中。粟津の息子で、同邸宅所有者の粟津ケンは、今後も若手作家を中心とした発表の場にしていきたいと語っている。
会期:2023年9月9日〜10月29日 ※土日のみ開館
会場:粟津邸
住所:神奈川県川崎市多摩区南生田1-5-24
開館時間:11:00〜17:00
休館日:期間中の平日(ただし祭日は開館)
料金:1000円
東京・京都の2会場で開催。落合陽一写真展「晴れときどきライカ」(ライカギャラリー東京、ライカギャラリー京都)
ライカカメラジャパンは、メディアアーティスト・落合陽一の写真展「晴れときどきライカ」をライカギャラリー東京とライカギャラリー京都で開催している。会期は両会場とも10月29日まで。
今回、落合はライカギャラリー東京では「晴れときどきライカ ── 逆逆たかり行動とダダイズム」、そしてライカギャラリー京都では「晴れときどきライカ ── 質量への憧憬、ラーメンは風のように」と題した個展を同時開催。“晴れときどきライカ”という自身の日常を描き出すフレーズを軸に、作品が展開される。
会場ではキャプションのQRコードを読み取ることで、写真の見え方が大きく変わる仕掛けも施されているため、会場に足を運んでほしい。
晴れときどきライカ ── 逆逆たかり行動とダダイズム
会期: 2023年9月1日〜10月29日
会場:ライカギャラリー東京(ライカ銀座店2F)
住所:東京都中央区銀座6-4-1 2F
電話番号:03-6215-7070
開館時間:11:00〜19:00
休館日:月
料金:無料
晴れときどきライカ ── 質量への憧憬、ラーメンは風のように
会期:2023年9月2日〜10月29日
会場:ライカギャラリー京都(ライカ京都店2F)
住所:京都府京都市東山区祇園町南側570-120
電話番号:075-532-0320
開館時間:11:00〜19:00
休館日:月
料金:無料
工芸の可能性に着目。「北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI 2023 物質的想像力と物語の縁起—マテリアル、データ、ファンタジー」(富⼭県富⼭市富岩運河沿い)
富山、石川、福井の3県にまたがる広域が舞台となる北陸工芸の祭典として2020年に始まった「GO FOR KOGEI」。工芸の魅力を今日的視点から発信するプラットホームとして着実に回数を重ねてきた同祭が、今年4回目を開催中だ。会期は10月29日まで。
今年のテーマは「物質的想像力と物語の縁起ーマテリアル、データ、ファンタジー」。ここにある「物質的想像力」とは、フランスの科学哲学者であるガストン・バシュラール(1884〜1962)の著書『水と夢:物質的想像力試論』のなかで使用された言葉だ。本展では、この言葉を軸にしながら、絵具だけでなく土、布、鉄など様々な物質を使用する26作家が参加。工芸、現代美術、アール・ブリュットなどのジャンルを超えたラインナップとなる。
会場構成もこれまでと異なる。舞台となるのは、富山市の中心部から富山湾までの約5キロメートルにわたる富岩運河沿いにある「環水公園エリア」「中島閘門(こうもん)エリア」、そして「岩瀬エリア」だ。鑑賞者はこれらのエリアを徒歩や路面電車、観光船などでめぐりながら鑑賞するというスタイルとなる。
会期:2023年9⽉15⽇〜10⽉29⽇
会場:富⼭県富⼭市富岩運河沿い(環⽔公園エリア、中島閘⾨エリア、岩瀬エリア)
開館時間:10:00〜16:30 ※入場は閉場の30分前まで
休館日:樂翠亭美術館(⽔)、富⼭県美術館(⽔)、KOBO Brew Pub(⽕)ほかは会期中無休 ※なお臨時休館・開館する場合あり。詳細は公式サイト等を確認のこと
料金(ガイドブック付き):⼀般 2500円 / ⾼校⽣ 1500円
東京・八重洲の新たなアートセンター「BUG」で出会う。雨宮庸介個展「雨宮宮雨と以」(BUG)
今年の9月20日に東京・八重洲に新たなアートセンターがグランドオープンした。その名も「BUG(バグ)」。そのこけら落としとして開催中の作家・雨宮庸介による個展「雨宮宮雨と以」が10月30日で閉幕となる。担当キュレーターは、檜山真有。
本展は、自身の人生と表現を並走させて展示を行ってきた雨宮が「人生最終作のための公開練習」と称して行うもの。「彫刻」「身体(作家自身)」「スクリプト(原稿)」の3つが要素となり、影響しあって循環的に見せる構成となっている。
会場では、2001年頃の作品から最新作までがインスタレーションという形式で展示されている。テーブルに再構成されるのは、活動初期から制作されているりんごの彫刻作品シリーズ「apple」をはじめ、Reborn-Art Festival 2021-22で発表された《石巻13分》の記録映像、2014年より開始されたプロジェクト「1300年持ち歩かれた、なんでもない石」などだ。
会期:2023年9月20日〜10月30日
会場:BUG
住所:東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー 1階
開館時間:11:00〜19:00
休館日:火
料金:無料