2025.2.21

「Art Kudan 2025」(kudan house)開幕レポート。親密な空間でアートの購入体験を

東京・九段にある「kudan house」(旧山口萬吉邸)を舞台に開催されているアートイベント「CURATION⇄FAIR Tokyo」。その第2部となるアートフェア「Art Kudan」がスタートした。会期は2月24日まで。

文・撮影=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

ギャラリー 志の展示風景より
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 展覧会とアートフェアの2部で構成され、東京・九段にある登録有形文化財「kudan house」(旧山口萬吉邸)を舞台に開催されているアートイベント「CURATION⇄FAIR Tokyo」。その第2部となるアートフェア「Art Kudan」が始まった。

 昨年初めて開催されたこのイベント。今年は2月1日〜16日の期間、3名のキュレーターによって厳選された作品を紹介する展覧会が開催され、古美術から近代美術、現代美術まで、異なる時代やジャンルの作品が同じ空間で展示され対話を繰り広げていた。

しぶや黒田陶苑の展示風景より
MA2Galleryの展示風景より

 2月24日まで開催されているアートフェアでは、鑑賞者は実際に作品を購入することを通じ、「アートをコレクションする喜び」を体験することができる。今年の参加ギャラリーは昨年の15軒から21軒へ増加。各ギャラリーによる展示作品数も大幅に増えている印象を受けており、「それぞれのギャラリーの熱量が非常に伝わってくるプレゼンテーション」になっていると、主催者の川上尚志(ユニバーサルアドネットワーク代表)は開幕に際して述べている。

 例えば、今年初めて参加したTARO NASUは、田島美加や榎本耕一、中井波花などの作品を展示。加えて、ヨーゼフ・ボイスの立体や、ドナルド・ジャッドソル・ルウィットサイ・トゥオンブリーバーネット・ニューマンらの紙作品など、同ギャラリーにとって通常の展覧会やアートフェアで紹介する機会の少ない作品を一堂に紹介している。

TARO NASUの展示風景より
TARO NASUの展示風景より

 同ギャラリーディレクターの細井眞子は「最近、工芸や現代美術の鑑賞者の層が近づいてきているような傾向があると感じている。工芸を好む客層がたくさん来るこのアートフェアに現代美術の作品を展示してみるのは面白いのではないかと思い、今回のフェアに参加した」と述べており、こうした新しい客層に出会うことも参加の理由のひとつだったとしている。

ロンドンギャラリーの展示風景より

 国内のアートフェア参加が珍しいロンドンギャラリーは1階の応接室で、古墳時代の埴輪や、現代美術家・橋本雅也が鹿角、鹿の骨を素材に制作した花や植物の作品を展示。地下1階では、ANOMALY青木野枝の新作や、Chim↑Pom from Smappa!Groupが白い大理石を使ってつくられた「ゴミの墓」の作品を紹介している。小山登美夫ギャラリーは「犬」を共通のモチーフに、シャルロット・デュマ、小出ナオキ、桑原正彦、大宮エリー、和田咲良の5名によるグループ展「犬のいる風景2」を行っている。

ANOMALYの展示風景より、青木野枝の新作群
小山登美夫ギャラリーの展示風景より

 2階の和室では、MISAKO & ROSEN無人島プロダクションが隣り合ったかたちで展示を行っている。MISAKO & ROSENは、加賀美健、ネイサン・ヒルデン、廣直高、エリカ・ヴェルズッティなどの作品を紹介し、無人島プロダクションは、展覧会に合わせてつくられた臼井良平の新作に加え、風間サチコの掛け軸や八木良太のインスタレーションなどの作品を展示している。

無人島プロダクションとMISAKO & ROSENの展示風景より
MISAKO & ROSENの展示風景より、左は廣直高の作品。右は加賀美健の作品

 このフェアは、元邸宅という親密な建築空間で行われるため、鑑賞者は一点ずつの作品をより間近に鑑賞することができる。また、コンベンションセンターなどで開催されるアートフェアと比較し、ギャラリースタッフが鑑賞者に作品を積極的に紹介する姿がしばしば見受けられ、ギャラリーと鑑賞者とのあいだではオーガニックなコミュニケーションが生まれている。

 同フェアのシニアアドバイザーを務める山本豊津(株式会社東京画廊 代表取締役社長)は、「美術品の収集においてもっとも重要なのはコンテキストだ」としつつ、次のように話している。「この『CURATION⇄FAIR』は、『キュレーション』という要素を取り入れたことによって、まるでこの家に住んでいる架空の人物が、古美術から現代美術まで集めたものをシミュレーションしたようなかたちになっている。ここに来るお客さんは、建物を見ながら、どのように作品を飾るべきかといったことを体験していただければ、自分のコレクションのコンテキストをつくるための参考になるのではないか」。

東京画廊+BTAPの展示風景より

 古美術から近代美術、現代美術まで、幅広い時代やジャンルの作品をkudan houseという親密な空間で楽しめるこのフェア。ぜひ、この機会に足を運び、作品収集を味わってみてはいかがだろうか。

HAGIWARA PROJECTSの展示風景より
KOKI ARTSの展示風景より
WAITINGROOMの展示風景より