京都市京セラ美術館の建物が公開。大規模リニューアルの注目ポイントとは?
2020年3月21日にリニューアル・オープンする京都市京セラ美術館(京都市美術館)の建物内部が報道陣に公開された。大規模なリニューアルで何がどう変わったのか? 現地レポートを含めてお届けする(2020年3月13日追記:開館は4月4日に延期)。
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そもそも「京都市美術館」とは?
京都市美術館は、平安神宮や京都国立近代美術館などを擁する京都市左京区・岡崎公園内に位置する、関西を代表する公立美術館として知られる。開館したのはいまからおよそ80年前の1933年。建築計画はその5年前、1928年に京都で行われた昭和天皇即位の礼を記念して始まった。
京都市美術館は、公立美術館としては上野の東京都美術館に次ぐ日本で二番目の公立美術館であり、本館は前田健二郎が設計。洋風建築に和風の屋根をかぶせた、和洋折衷のいわゆる「帝冠様式」を代表する建築のひとつだ。
開館当初は「大礼記念京都美術館」という名称だったが、第二次大戦後にGHQによって接収。1952年の接収解除に伴い、京都市美術館と名前を改めた。
2017年からは大規模改修を行い、それに伴ってネーミングライツを導入。19年から呼称は「京都市京セラ美術館」となった。そして2020年3月、この大規模リニューアルが完了し、新たに生まれ変わる(2020年3月13日追記:開館は4月4日に延期)。
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リニューアルで何が変わる?
建築家・青木淳(今年、京都市京セラ美術館館長に就任)が手がけた今回のリニューアルでは、何が変わったのか? 注目ポイントは、「エントランス」「本館」「新館」の3つだ。それぞれの様子を現地の写真とともにお届けする。
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まずはエントランスがあるのは、スロープ状の広場「京セラスクエア」。ここは、美術館が周囲の空間と緩やかにつながる場所として機能する「憩いの場」であると同時に、作品展示やパフォーマンス、イベントなどの開催も想定されている。
この広場にあるリニューアルのシンボル的存在が、歴史的建築と融合したガラスのファサード「ガラス・リボン」であり、来館者は主にここを通って美術館へと入っていく。これまでの重厚な外観を維持しながら新たなエントランスを地下に新設することで、より美術館へアクセスしやすくなったと言える。
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アップデートした本館
80年にわたって親しまれてきた本館は、その意匠をできるかぎり残したまま、設備機能を大幅にアップデートした。
本館の中心に位置する天井高16メートルの旧大陳列室は、地下1階のメインエントランスから大階段によってつながる「中央ホール」へと変わり、美術館の様々な場所へとつながるハブ(中心)として機能する。
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中央ホールを南北から挟む、それぞれ「ロの字型」の北回廊と南回廊は展示室として機能。南回廊1階には約1000平米の常設展示室が新設された。また北回廊では、自主企画展や特別展、公募展などが行われるという。
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本館内にあった南北ふたつの中庭もそれぞれ生まれ変わった。それまでは空調機械類が設置されており、非公開とされていたこの空間。北回廊の中庭は2階にバルコニーを設け、ガラスの大屋根をかけることで室内化し、「光の広間」となった。ここはレセプションやイベント会場などとしても使用されることが想定されている。
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いっぽう南回廊の中庭は、「天の中庭」として空を見上げることができるオープンなスペースに変貌した。館内で外気と触れられる、リラックスできる空間だ。
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このほか、京都市美術館からそのまま引き継がれた、歴史的なディテールが随所にそのまま残るのも、今回のリニューアルのポイントとして外せない。
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現代美術に対応する新館「東山キューブ」
本館の東側に新たに誕生した新館「東山キューブ」は、現代美術を中心に多ジャンルの作品を紹介する展示空間だ。
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東山キューブの面積は約1000平米。天井高は5メートルで、展示室と収蔵庫、バックオフィス、屋上庭園を備えている。外装のタイルは、その幅を本館のレンガ幅とあわせており、陽の移り変わりによって異なる表情を見せる。
壁の色は館内でもっとも白く、床にはホワイトオークを使用。可動壁も立てられる仕様になっており、空間の雰囲気を展示ごとに変化させる。
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今回の改修では、メインエントランスから東山を借景とする東山キューブ側まで、美術館の東西が貫通した。これが大きなポイントだと青木淳は話す。
長い歴史を重ねてきた美術館に、新たな歴史を一層加えた今回のリニューアル。青木は「潜在的な価値を発掘し直した美術館としてつくった」という。
機能を強化するとともに、より開かれた美術館として生まれ変わった京都市京セラ美術館。3月の開館が待ち遠しい。なお開館以降の展覧会スケジュールはこちら。