2025.3.18

「北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで」(すみだ北斎美術館)開幕レポート。浮世絵師を支えた板元たちの功績をたどる

すみだ北斎美術館で「北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで」がスタートした。会期は5月25日まで。

展示風景より、山東京伝『新吉原細見』(1792) 板元:蔦屋重三郎
前へ
次へ

 東京都墨田区にあるすみだ北斎美術館で、「北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで」がスタートした。会期は5月25日まで。

 同展は、浮世絵師による有名な作品の展示のみならず、その板元(版元)たちがどのように絵師たちをプロデュースし、世に作品を生み出してきたかをたどる展覧会となっている。現在、NHKにて放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」とあわせて鑑賞したい内容だ。

展示風景より
展示風景より、中川五郎左衛門 編『江戸買物独案内』(1824)。江戸市中の店を紹介した買い物ガイドブック。板元の情報も掲載されている
展示風景より

 会場は、大きく分けて「腕利きプロデューサー 蔦屋重三郎」「北斎と関わるプロデューサーズ」「現代に継承される浮世絵版画制作と北斎」の全3章構成。

 まず、1章「腕利きプロデューサー 蔦屋重三郎」では、江戸のメディア王とも評された蔦屋重三郎を取り上げている。新吉原に生まれ、その地で本屋を開業した蔦屋重三郎は、その時代を読む力をもって喜多川歌麿や東洲斎写楽といった浮世絵師たちの才能をいち早く見抜き、江戸の文化の発展に貢献した。

 ここでは、五代目まで続く「蔦屋重三郎」のうち、葛飾北斎に影響を与えた初代と二代目の功績を取り上げ、その作品とともに紹介している。

展示風景より、山東京伝『新吉原細見』(1792) 板元:蔦屋重三郎
展示風景より、葛飾北斎『東都名所一覧』(1800) 板元:二代蔦屋重三郎
展示風景より、葛飾北斎『画本狂歌 山満多山』(1804) 板元:二代蔦屋重三郎

 2章「北斎と関わるプロデューサーズ」では、北斎の作品制作を取り巻く当時の板元たちを紹介。例えば、京都の書物問屋で、江戸に進出し日本橋に店を構えた「鶴屋喜右衛門」や、蔦屋重三郎のライバルであり、北斎の代表作である「冨嶽三十六景」などといった風景画シリーズを出版した「西村屋与八」、北斎の代表作である絵手本『北斎漫画』を出版した「永楽屋東四郎」「角丸屋甚助」、北斎晩年の錦絵シリーズ「百人一首うばかゑとき」を出版した「伊勢屋三次郎」、そして幕末を代表する版元であり、北斎の「千絵の海」「琉球八景」シリーズなどを手がけた「森屋治兵衛」といった6名の板元とその功績、そして関連する作品が展示されている。

展示風景より、手前は葛飾北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》(1831) 板元:西村屋与八
展示風景より、葛飾北斎『北斎漫画』(1814-78) 板元:永楽屋東四郎、角丸屋甚助
展示風景より、手前は葛飾北斎《百人一首乳母か縁説 元良親王》(1835頃) 板元:伊勢屋三次郎
展示風景より、葛飾北斎「葛飾北斎『桜に鷹』ほか 四面版木火鉢」。作品の特定ができていない版木が側面に使用された火鉢

 最終章「現代に継承される浮世絵版画制作と北斎」では、浮世絵にインスピレーションを得た現代アーティストらによる作品を紹介。アーティストごとのユニークな視点に加え、いまなお残る浮世絵の伝統技術にも注目してほしい。

展示風景より、福田美蘭《冨嶽三十六景 凱風快晴》(2021)
展示風景より、江幡喜之《富嶽三十六景 霊峰之女神》(2025)

 なお、4階企画展示室では、「隅田川両岸景色図巻」の高精細複製画と『北斎漫画』を常設する「常設展プラス:隅田川両岸景色図巻(複製画)と北斎漫画」も開催中(〜8月31日)この機会にぜひこちらもご覧いただきたい。